茶道具がたくさん出てきたら、どう売ればよいか ― 一軒のお道具から見えた、まとめて手放すときの考え方
茶碗に掛軸、棗に水指、お稽古の袱紗や扇子、懐石の器まで――。先日お伺いしたお宅では、細かなものまで数えると100点近い茶道具が出てまいりました。長年お茶を嗜まれた方のお道具は、量も種類も多く、ご家族だけで整理しようとすると途方に暮れてしまうものです。本稿では、そのお道具を整理し、お買取りした実例をもとに、茶道具がたくさん出てきたときの整理の仕方と、売却先を考えるうえで知っておきたいことを、古美術商の立場からご案内いたします。お買取りした品のうち、当店の買取実績に掲載した6点もあわせてご紹介いたします。
結論から申し上げれば、茶道具は「ご自身で仕分けや処分をせず、箱も捨てずに、まとめて一度に見てもらう」のが最も確かな手放し方です。お買取りできる品、ご処分なさってよい品、手元に残されたほうがよい品の見分けは、全体をそのまま拝見してこそ正しくつけられます。とりわけ、作家の手になる品を一点も見落とさないことが何より大切です。
この記事でわかること
- たくさんの茶道具を、どう分けて考えればよいか
- 箱と中身を合わせ、仕分けてからお買取りするまでの流れ
- 棗・水指・花籠・鉄瓶 ― 買取実績に掲載した6点の見どころ
- 作家・共箱・状態・揃い ― 価値を分けるもの
- 茶道具の売却先を選ぶときの考え方
The case100点近い茶道具が出てきた、あるお宅
ご依頼は、世田谷区のお宅からでした。長くお茶を続けてこられた方のお道具で、茶碗や掛軸、棗・水指といった点前の道具に加え、お稽古で使われた袱紗や扇子、茶懐石の器までが、押入れや棚にまとまって残されていました。細かなものまで数えると、100点近くになります。
ご家族は「どれが大事なものなのか分からない」とおっしゃっていました。茶道具の多くは桐箱に納められていて、外から見ただけでは中身の格の違いが分かりません。しかも、長い年月のうちに出し入れを重ねたためか、箱と中身がばらばらになっているものが少なくありませんでした。
そこで今回は、私どもがお伺いして、次のような順でお道具を拝見いたしました。
- 箱と中身を合わせる
- 箱書や箱の寸法と、中身の形・作風・落款を照らし合わせ、本来の組み合わせに戻します。素性がはっきりすることで、正しく評価できるようになります。
- 一点ずつ査定する
- 作家・箱書・状態・揃いを見て、一点ずつ評価します。
- 仕分ける
- お買取りできる品、ご処分なさってよい品、処分せずに残されたほうがよい品に分けて、ご家族にお伝えします。
- お買取り
- お買取りできる品は、まとめてお買取りいたしました。
本稿でご紹介する6点は、こうしてお買取りした品のうち、当店の買取実績に掲載したものです。なお、世田谷区での茶道具のお買取りについては、地域のご案内のページにまとめております。
How to sortたくさんある茶道具は、まず「種類」で分けてみる
点数が多いときは、品物を一つひとつ見る前に、おおまかな種類で考えると全体が見えてきます。茶の湯のお道具は、おおむね次のように分けられます。今回ご紹介する6点も、この分け方に当てはめるとすっきり収まります。
- 茶器
- 抹茶を入れる器。薄茶用の棗(なつめ)、濃茶用の茶入など。
今回:一后一兆 紅葉平棗/清瀬一光 金地松千鳥蒔絵棗 - 水指
- 釜に足す水や、茶碗をすすぐ水をたくわえる器。
今回:十三代 今泉今右衛門 水指/十一代 三輪休雪 水指 - 花入・籠
- 茶花を生ける器。焼物・竹・金属などがあり、夏は竹の籠がよく使われる。
今回:三代 田辺竹雲斎 花籠 - 釜・鉄瓶
- 湯をわかす道具。茶の湯の釜のほか、鉄瓶は煎茶や略式の茶にも用いられる。
今回:秦蔵六 鉄瓶 - そのほか
- 茶碗・茶杓・香合・蓋置・建水、掛軸、懐石の器、お稽古の道具(袱紗・扇子・帛紗ばさみ)など。
大切なのは、この段階で「要るもの・要らないもの」を決めてしまわないことです。種類に分けて眺めるのは、全体の量と中身を把握するためであって、処分の線を引くためではありません。
Lacquer塗物 ― 二つの棗に見る蒔絵の手わざ
一后一兆(いちご いっちょう)の紅葉平棗は、平たく丸みのある姿の全面に、重なり合う紅葉を細やかな線であらわした一点です。一后一兆は石川県の生まれで、輪島塗の蒔絵師として名を知られた漆芸家です。全面に金をほどこした華やかな蒔絵を得意とし、茶道具の棗は今も多くの茶人に好まれています。共箱の箱書は「紅葉 平棗」。秋の茶席に向けて誂えられたお品でした。
清瀬一光(きよせ いっこう)の金地松千鳥蒔絵棗は、金地の全面に枝を広げる松を蒔絵であらわし、ところどころに螺鈿をちらした、品格のある棗です。黒塗の共箱が添っていました。清瀬一光は金沢の加賀蒔絵の蒔絵師で、初代と、その長男で父に師事した当代とが同じ名で仕事をしています。同じ名の作家が二代いる場合、どちらの作かは箱書や落款の違いで見ていきます。名前だけで判断しないことが、塗物を拝見するときの基本です。
Ceramics焼物 ― 人間国宝の水指を二点
今回のお道具には、重要無形文化財保持者(人間国宝)の水指が二点含まれていました。
十三代 今泉今右衛門の色鍋島の水指は、白磁の胴に染付で松の幹と梅の枝を描き、緑の松葉と赤い梅の花、裾の竹を配した、松竹梅のおめでたい意匠です。共箱の箱書は「色鍋島松竹梅絵 水指」。十三代は色鍋島の伝統に新しい表情を加えた名工で、1989年に色絵磁器で人間国宝に認定されました。今右衛門家は十四代も人間国宝であるため、何代の作かを箱と作風で見極めることが評価の要になります。
十一代 三輪休雪(三輪壽雪)の萩焼の水指は、ざらりとした土味の胴に「休雪白」と呼ばれる白釉が厚くかかり、両肩に耳を付けた、力強い姿のお品でした。十一代は1983年に萩焼で人間国宝に認定され、晩年まで作陶を続けた陶芸家です。三輪家も代々「休雪」の名を継いでいますので、こちらも代の見極めが欠かせません。
Bamboo & Iron竹と鉄 ― 茶花の籠と、湯をわかす道具
三代 田辺竹雲斎の花籠は、鍔のように広く張り出した透かし編みの縁に、密に編んだ丸い胴と高い丸手を付けた、共箱付きのお品です。三代竹雲斎(1940〜2014)は堺の竹工芸の家に生まれ、1991年に三代を襲名しました。丸竹のままの矢竹を生かした造形でも知られますが、こうした茶席向きの端正な籠も手がけています。竹籠は茶道具とは別のものと思われがちですが、茶花を生ける大切なお道具のひとつです。竹の花籠の評価については、竹籠の買取のページもご覧ください。なお、竹籠ばかりが一軒にまとまっていた別のお宅の事例は、竹籠のコレクションのお話に書いております。
秦蔵六(はた ぞうろく)の鉄瓶は、丸く張った胴の肩に古銅器を思わせる雷文の帯をめぐらせ、鳥の頭をかたどった注口と環の摘みを付けた、古格のある鉄瓶です。秦蔵六は京都の鋳金家で、初代は中国古銅器の写しを得意とし、明治天皇の御璽・国璽を鋳造したことでも知られます。その名は四代まで受け継がれました。この鉄瓶には共箱がなく、何代の作かは定めておりません。それでも、鋳肌の景色や意匠の格から作家の手になる品と拝見し、お譲りいただきました。秦蔵六の作品については、別にご案内のページを設けております。
What makes the value価値を分けるのは「作家・箱・状態・揃い」
今回ご紹介する6点に共通するのは、作家がはっきりしていることです。茶道具の評価は、おおむね次の四つで決まります。
- 作家
- 誰の作か。人間国宝や名工の作、名跡を継ぐ家の作は、何代の作かまで含めて評価します。
- 箱・書付
- 作家自身が箱に書いた共箱、家元や宗匠の書付。箱は中身の素性を示す大切な証です。
- 状態
- 欠け・ひび・直しの有無。塗物は擦れ、鉄瓶は錆や漏れも見ます。
- 揃い
- 懐石の器や茶碗の組物は、数が揃っているか。仕覆・袋・添状などの付属も含みます。
一方で、率直に申し上げれば、お稽古用に量産された道具や、揃いの欠けた器などは、単独では値がつきにくいこともございます。ただ、それを決めるのは拝見したあとです。今回のお宅でも、箱と中身が入れ違っていたり、箱だけが別の棚にしまわれていたりするものが多くありました。箱書と中身を照らし合わせて組み直すと、それだけで素性がはっきりし、評価が変わる品もあります。小さな香合が引出しの奥から出てくることもありますので、どうか先に処分なさらないでください。まとめてのご整理は、茶道具の買取のページでもご案内しております。
Where to sell売却先は、茶道具も鉄瓶も竹籠もまとめて見られる店に
今回の6点は、塗物・焼物・竹・鉄と、素材も分野もばらばらでした。茶の湯のお道具とは、もともとこうしたさまざまな工芸の取り合わせです。売却先を選ぶときは、茶道具だけでなく、鉄瓶や竹籠、掛軸まで同じ目で見られるかどうかを確かめてください。分野ごとに別の店へ持ち込めば手間がかかりますし、店によって得意・不得意があるため、見落としも生まれやすくなります。
そのうえで、ご相談の前に気をつけていただきたいことが三つあります。一つは、汚れていても洗ったり磨いたりしないこと。塗物や鉄瓶は、かえって傷めてしまいます。二つ目は、空き箱も含めて箱を捨てないこと。中身と入れ違っていても構いません。組み合わせは私どもで照らし合わせます。三つ目は、形見として手元に残したいものがあれば、遠慮なくお申し付けいただくことです。一部だけを残して、ほかをお譲りいただく形でも構いません。
古美術もりたは、茶道具をはじめ古美術全般を扱う古美術商として、一軒のお道具を一点ずつ、作品の価値に見合った評価でご提案いたします。無理にお勧めすることはありません。値がつきにくいものも含めて、拝見したうえで率直にお伝えいたします。点数が多く、どこから手をつけてよいか分からないときこそ、まずは茶道具の買取についてご相談ください。
茶道具のご整理・売却のご相談
茶室や押入れに残された茶道具を、鉄瓶・竹籠・掛軸・懐石の器まで含めて、まとめて拝見いたします。点数が多くても、何があるか分からなくても構いません。ご自宅へお伺いし、一点ずつ丁寧に拝見いたします。出張費・お見積り・ご相談は無料、秘密厳守で承ります。
FAQよくある質問
茶道具が100点近くあり、何があるのか整理できていません。そのままでも見てもらえますか?
茶道具のほかに、鉄瓶や竹籠、掛軸も一緒に見てもらえますか?
共箱がない茶道具でも売れますか?
お稽古で使っていた道具や、懐石の器にも値がつきますか?
茶道具の売却先は、どう選べばよいですか?
出張でまとめて見てもらえますか?どの地域まで来てもらえますか?
About / Operator運営者・鑑定者情報
茶道具の売却は、作家と箱書を読む確かな目が要です。古美術もりたの概要と、取引に関わる許可・登録をご案内いたします。
小田急線「成城学園前駅」より徒歩8分(ご来店は完全予約制)
※ お見積り・ご相談はすべて無料、秘密厳守でお伺いいたします。許可・登録の詳細はご利用案内をご覧ください。
茶道具の買取・出張査定エリア
茶碗・棗・水指から釜・鉄瓶までの買取は茶道具の買取(全国対応)をご覧ください。下記の地域は出張査定でお伺いしております。
※ お客様の特定につながる情報は控えております。
※ 作家の経歴・生没年には資料により異同があり、諸説ある事項は断定を避けました。参考:三代田辺竹雲斎(田辺竹雲斎 公式サイト)/清瀬一光(金沢市デジタル工芸展)/清瀬一光(石川県立図書館)/秦蔵六(コトバンク)
※ 茶道具の価値は、作家・箱書・状態・揃いによって異なります。本記事は一般的なご案内であり、個別の品については拝見のうえでご提案いたします。