竹籠のコレクションは、まとめて売れるのか ― 一軒に集まっていた6作家・8点の花籃
床の間の脇、天袋の奥、納戸の棚。長年しまわれていた桐箱を一つずつ開けていくと、出てきたのは花を生ける竹の籠でした。それも一つや二つではありません。先日お伺いしたお宅では、大阪・堺の名家から東京の飯塚家、別府の人間国宝まで、6人の作家による竹籠8点が、ひとつの家に大切に伝えられていました。本稿では、この8点をお譲りいただいた事例をもとに、竹籠をまとめて手放すときに知っておきたいことを、古美術商の立場からご案内いたします。
結論から申し上げれば、竹籠のコレクションは、まとめてお見せいただくほど評価しやすくなります。作家ごとの編みの違い、代の違い、箱や付属の揃い方が並べることではっきりと見え、一点ずつでは分かりにくい価値が浮かび上がるからです。一方で、すべてを一度に手放す必要はありません。今回のお客様も、二度に分けてお譲りくださいました。
この記事でわかること
- 一軒のお宅に伝わっていた、6作家・8点の竹籠の内容
- 8点を並べると見えてくる、竹工芸の系譜
- まとめて拝見することで、評価が定まりやすくなる理由
- 何回かに分けて手放すという選び方
- 評価を左右した点と、手放す前にしないでほしいこと
The collection二度に分けてお譲りいただいた、8点の竹籠
ご相談をいただいたのは、当店と同じ世田谷区のお宅でした。花籃がいくつかあるので見てほしい、というお話で伺ったところ、箱に納められた竹籠が次々と出てまいりました。いずれも長く大切にしまわれていたもので、竹の色は年月を経て落ち着いた飴色に変わり、編み目にも大きな傷みは見られませんでした。
当日はすべてを拝見し、一点ずつ作家と見どころをご説明いたしました。そのうえで、お客様は時期を分け、二度に分けてお譲りくださいました。最初からすべてを手放すと決めておられたわけではありません。まず全体の評価を知り、ご納得のいく形で手放すお品を選ぶ。それもひとつの、そして大切な選び方だと考えております。世田谷区でのご相談の窓口は、世田谷区の竹籠買取のページにまとめております。
Six makers一軒に集まっていた、6人の作家
お譲りいただいた8点は、次のとおりです。初代と二代の田辺竹雲斎が揃い、二代飯塚鳳斎の籠は作風の異なる二点がありました。
| 作家 | 籠 | 見どころ | 付属 |
|---|---|---|---|
| 四代 早川尚古斎 | 花籠 | 細いひごを縦に並べ、編み帯で締めた細長い胴に高い手 | 箱 |
| 二代 和田和一斎 | 花籠 | 細かな透かし編みの丸い胴に、二本の高い手 | ― |
| 初代 田辺竹雲斎 | 手付花籃 | 耳を備えた壺形の胴に高い手 | 共箱 |
| 二代 田辺竹雲斎 | 手付花籃 | 上部を透かし、下部を密に編んだ角形 | 共箱 |
| 初代 前田竹房斎 | 手付花籃 | 幅のあるひごを束ねて大きく交差させた胴に高い手 | ― |
| 二代 飯塚鳳斎 | 花籃 | 細いひごを杉綾状に密に編み上げた壺形 | ― |
| 二代 飯塚鳳斎 | 花籠 | 太めのひごを力強く編み組んだ、低く横に広がる胴 | 箱 |
| 生野祥雲斎 | 花籠 | 竹筒の胴に、籐を巻いた高い手 | 箱 |
※ 付属の「―」は、拝見の時点で箱が見当たらなかったものです。
A lineage in one house8点が語る、竹工芸の系譜
この8点を並べてみると、明治から昭和にかけての日本の竹工芸の、主な流れがほぼ揃っていることに気づかされます。
ひとつは大阪・堺の流れです。大阪の早川尚古斎は、唐物(中国渡来)の籠を写す技を磨いた籠師の家として知られます。堺に生まれた初代前田竹房斎は、三代尚古斎にその腕を認められ、のちに独学で竹芸を究めたと伝わります。また初代田辺竹雲斎は、初代和田和一斎のもとで竹芸を修行し、堺の地で家を興しました。今回の8点には、こうして互いに結びつく四つの家の籠が含まれていました。
もうひとつは、東京で活躍した飯塚家です。二代飯塚鳳斎は、近代竹工芸を代表する飯塚琅玕斎の兄にあたり、唐物風の確かな技量による花籃を残しました。そして別府の生野祥雲斎は、竹工芸の分野で初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された作家です。
集められた方が、こうした系譜を意識しておられたのかは分かりません。けれども、関西・関東・九州の名工の籠を一軒で揃えておられたことに、確かな目と、竹の籠への深い愛着を感じずにはいられませんでした。作家ごとの詳しいご紹介は、この読みもので順にお届けしてまいります。
Seeing them togetherまとめて拝見すると、何が見えるのか
竹籠は、一点だけを拝見するよりも、まとまった数を並べて拝見するほうが、評価が定まりやすい品です。理由は三つございます。
一つめは、作家ごとの違いがはっきりと見えることです。細いひごを隙間なく編み込む端正な唐物風の籠と、幅のあるひごを束ねて大胆に交差させる籠とでは、同じ花籃でも考え方がまったく異なります。並べることで、それぞれの籠がどの作家らしい仕事なのかが際立ちます。
二つめは、代の違いや作風の幅が読み取れることです。今回のように初代と二代の竹雲斎が揃っていれば、同じ家の中での作風の受け継ぎ方と変化が見えてきます。同じ二代鳳斎の籠でも、密に編んだ壺形と、太いひごで力強く組んだ平たい籠とでは、表情がまるで違います。
三つめは、伝来が確かめやすいことです。同じ方が同じ時期に集め、同じように保管してきた籠は、竹の色の落ち着き方や箱の様子にも共通した手がかりが残ります。その一群が、ひとつの家で大切に伝えられてきたこと自体が、お品の来歴を物語ります。
Five points評価を左右した、五つの点
今回の8点を拝見するにあたり、当店では次の点を一点ずつ確かめました。竹籠の評価は、大きさや古さだけでは決まりません。
- 作家と代
- 銘や箱書から、どの作家の、何代目の作か。同じ名でも代によって評価は変わります。
- 共箱・箱書
- 作者自身が署名した共箱があるか。作者と作品を結びつける、最も大切な証です。
- 編みと形
- ひごの揃い、目の均一さ、底や口の始末、手の付け根の納まり。見えにくい部分にこそ技量が出ます。
- 時代色・状態
- 年月を経た竹の落ち着いた色合い、虫食い・割れ・ゆがみの有無。
- 揃いと伝来
- 一群としてまとまって伝わっているか。落し(中の水受けの筒)や栞などの付属。
竹籠の種類や素材、編みの見方については、竹籠の買取のページで詳しくご案内しております。
Before you sell竹籠を手放す前に、なさらないでほしいこと
竹は自然の素材のため、良かれと思ってなさったお手入れが、かえって価値を損ねてしまうことがございます。ご相談の前に、次の点だけはお気をつけください。
まず、水拭きや洗剤での洗浄はなさらないでください。年月を経た竹の色合いは後から作ることができず、評価の大切な要素です。ほこりは乾いた柔らかい刷毛で軽く払う程度で十分です。次に、外れたひごや籐、落しは捨てずに保管してください。そして何より、籠と箱を分けて処分なさらないでください。箱だけが別の部屋にしまわれていることもよくありますので、心当たりの箱はすべてお手元に残しておいていただけますと幸いです。
事前にお写真をお送りいただく場合は、籠の全体、底(銘があることが多い部分)、箱の蓋の表と裏の三点があると、おおよその評価をお伝えしやすくなります。
Where to sellなぜ、売る先で評価が変わるのか
日本の竹工芸は、国内以上に海外で高く評価されてきた分野です。ニューヨークのアビー・コレクションをはじめ、海外には日本の竹籠を体系的に集めたコレクションがあり、名工の在銘の花籃は、美術工芸品として国際的な市場で扱われています。同じ一点でも、国内の道具としての相場だけで見る店と、こうした評価を踏まえて見られる店とでは、ご提示できる金額に差が生じます。
古美術もりたは、茶道具・煎茶道具とともに竹籠を見つめ、海外のオークションハウスとの取引を重ねてまいりました。作品にふさわしい評価を率直にお伝えし、無理にお勧めすることはございません。まとまった竹籠のご整理は、竹籠の買取のご案内もあわせてご覧ください。
竹籠・花籃のご売却、まとめてご相談ください
古美術もりたは、名工の竹籠を、作品の価値に見合って評価いたします。作家の違う籠が何点もある、箱と籠がばらばらになっている、誰の作か分からない籠が混じっている。そうした場合も、選り分けずにそのままお見せください。一度にすべてを手放す必要はございません。お見積り・ご相談は無料、秘密厳守で承ります。
FAQよくある質問
作家の違う竹籠が何点もあります。まとめて見てもらえますか?
同じ作家の花籃が二つあります。どちらも評価されますか?
一度に全部ではなく、何回かに分けて売ることはできますか?
箱や落し(中の筒)がない竹籠でも、売ることはできますか?
誰の作か分からない竹籠が混じっていても、大丈夫ですか?
竹籠のコレクションの出張査定は、どの地域まで来てもらえますか?
About / Operator運営者・鑑定者情報
竹籠のような竹工芸の査定は、編みと素材への確かな知識と、作者・来歴への敬意が要です。古美術もりたの概要と、取引に関わる許可・登録をご案内いたします。
小田急線「成城学園前駅」より徒歩8分(ご来店は完全予約制)
※ お見積り・ご相談はすべて無料、秘密厳守でお伺いいたします。許可・登録の詳細はご利用案内をご覧ください。
竹籠の買取・出張査定エリア
花籃・竹工芸の買取は竹籠の買取(全国対応)をご覧ください。下記の地域は出張査定でお伺いしております。
※ 作家の系譜・師弟関係は、堺市の所蔵作家紹介、別府市の竹工芸紹介などの公開資料を参考にしています(初代 前田竹房斎(堺市)/初代 田辺竹雲斎(堺市)/人間国宝 生野祥雲斎(別府市)/竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション(大阪市立東洋陶磁美術館))。系譜・年代には諸説ございます。本記事は実際の買取事例をもとにした一般的なご案内であり、お客様の特定につながる情報は掲載しておりません。個別のお品については、拝見のうえでご提案いたします。