古美術もりた ← 読みもの一覧へ
竹工芸

早川尚古斎の花籃は何代目か ― 初代から五代まで、歴代の作風と価値の見極め方

2026.10.23 古美術もりた
四代 早川尚古斎の花籠と箱。細いひごを縦に並べて編み帯で締めた細長い胴に、高い手を付けた花籠
四代 早川尚古斎の花籠と箱。細いひごを縦に並べ、編み帯で締めた細長い胴に、高く弧を描く手を付けています。/世田谷区のお宅にて拝見(当店撮影)

箱の蓋を開けると、飴色に落ち着いた竹の花籃。蓋の裏には「尚古斎」の署名がある。けれども、それが何代目の尚古斎なのかは、どこにも書かれていない――。早川尚古斎(はやかわ しょうこさい)は、江戸時代の終わりに大阪で始まり、明治・大正・昭和を通じて受け継がれてきた籠師の名跡です。同じ「尚古斎」の名でも、代によって作風も時代も異なり、評価も変わります。本稿では、当店が実際に拝見した初代と四代の作品を手がかりに、歴代の尚古斎の特徴と、何代目の作かを見分けるための視点を、古美術商の立場からご案内いたします。

結論から申し上げれば、早川尚古斎の花籃は「何代目の作か」を見極めることが、評価の出発点です。そのうえで、共箱・箱書の確かさ、編みと形の出来、竹の時代色と保存状態を総合して評価が決まります。箱に代数が書かれていないことも多いため、署名と印、箱の時代、籠の作風をあわせて読み解く必要があります。

この記事でわかること

早川尚古斎(はやかわ しょうこさい)とは ― 大阪で始まった竹工芸の名跡。初代 早川尚古斎(1815〜1897)は、中国渡来の籠を写す「唐物写し」の高い技術と知識をもとに、文人や数寄者と交わりながら煎茶道具の籠を数多く手がけ、竹工芸家として初めて自身の名を作品に記したとされます。その名は子孫に代々受け継がれ、五代 早川尚古斎(1932〜2011)は2003年に重要無形文化財「竹工芸」保持者(人間国宝)に認定されました。「尚古齋」とも表記されます。

About the Hayakawa family早川尚古斎とは ― 大阪の籠師から人間国宝まで

江戸時代の後期から明治にかけて、文人趣味の煎茶が大いに流行すると、煎茶席を飾る花籃や茶具を収める籠が求められるようになりました。手本とされたのは、中国から渡ってきた精緻な籠、いわゆる「唐物(からもの)籠」です。その唐物を写す技を磨いた籠師たちが大阪に集まり、なかでも第一人者として名を馳せたのが、初代 早川尚古斎でした。

籠はもともと職人の手仕事であり、作り手の名が作品に残ることはほとんどありませんでした。そのなかで初代尚古斎は、竹工芸家として初めて自身の名を作品に記したとされます。籠が「作家の作品」として見られるようになる、その先駆けとなった人物です。のちに堺で独自の竹芸を切り拓いた初代 前田竹房斎も、若い頃に三代尚古斎にその腕を認められたと伝わります。

尚古斎の名は、明治・大正・昭和と代々受け継がれました。戦争中の空襲を機に家は京都へ移り、五代 早川尚古斎は2003年に重要無形文化財「竹工芸」保持者に認定されています。一つの名跡が五代にわたって竹工芸の第一線にあり続けたことは、この家の技の確かさを物語っています。

Five generations歴代の尚古斎 ― 初代から五代まで

歴代の尚古斎の生没年と、主な特徴をまとめました。代によって活躍した時代も、作風も異なります。

早川尚古斎の歴代(おおよその目安)
代生没年主な特徴
初代1815〜1897現在の福井県の出身。京都で修業したのち大阪へ。唐物写しに独自の工夫を加え、煎茶の籠を数多く手がけた。
二代1860〜1905初代の三男。四十代半ばで亡くなったため、残された作品は多くない。
三代1864〜1922初代の五男。一時は東京で活動し、のちに大阪へ戻る。荒々しい竹を生かした自由な作風で知られる。
四代1902〜1975三代の長男。父の没後に家を継ぎ、竹工芸の団体の要職を務め、日展にも入選した。
五代1932〜2011四代の長男。大阪に生まれ、戦災を機に京都へ。2003年に重要無形文化財「竹工芸」保持者(人間国宝)に認定。

※ 生没年・経歴には資料によって異同がございます。

The first generation初代 早川尚古斎 ― 唐物写しと、作品に名を記した籠師

初代尚古斎の籠の魅力は、唐物の端正さと、そこに加えられた独自の工夫にあります。細く削りそろえたひごを密に編み込んだ精緻な仕事は、煎茶を愛した文人や数寄者に深く好まれました。名が作品に記されるようになったことで、その仕事は今日まで作者とともに伝えられています。

当店で拝見目黒区のお宅で ― 初代の手付花籃

初代 早川尚古斎の手付花籃と共箱。細かく編み込んだ小ぶりの手付花籃
初代 早川尚古斎の手付花籃と共箱。/目黒区のお宅にて拝見(当店撮影)

目黒区のお宅で拝見したのは、小ぶりの手付花籃でした。細いひごを細かく編み込んだ胴に、ほどよい高さの手を付けた、端正な姿の一点です。共箱が揃っており、作者と作品を結びつける確かな裏付けがございました。百年以上の時を経た竹の、落ち着いた色合いも見事なお品でした。目黒区でのご相談は、目黒区の竹籠買取のページにまとめております。

The fourth generation四代 早川尚古斎 ― 世田谷で拝見した花籠

四代尚古斎は、父である三代の没後に家を継ぎ、大正から昭和にかけて活躍しました。竹工芸が展覧会で評価される美術工芸の一分野となっていく時代に、竹工芸の団体の要職を務め、日展にも入選しています。

当店で拝見世田谷区のお宅で ― 四代の花籠

世田谷区のお宅で、6人の作家による竹籠8点をまとめて拝見した際、そのなかに四代尚古斎の花籠がございました。冒頭の写真の一点です。細いひごを縦にすっと並べ、編み帯で締めて細長い胴をつくり、口元には耳を、上には高く弧を描く手を付けています。縦の線を生かした、すっきりとした品のある姿でした。箱も添っており、大切に伝えられてきたことがうかがえました。この8点をお譲りいただいた経緯は、一軒に集まっていた6作家・8点の竹籠のお話でご紹介しています。

初代の精緻な手付花籃と、四代のすっきりとした縦長の花籠。同じ「尚古斎」の名を持ちながら、時代とともに籠の姿が移り変わっていることが、二点を並べるとよく分かります。

Telling the generations apart何代目かを見分ける、四つの手がかり

尚古斎の籠は、箱に「尚古斎」とだけ記され、何代目とは書かれていないことが少なくありません。当店では、次の四つをあわせて拝見し、何代目の作かを見極めます。

署名と印
箱の蓋裏や籠の底の署名・落款の書きぶりと、押された印。代ごとに筆癖や印が異なります。
箱の時代
箱の木の古び、紐、箱書の墨の様子。籠と箱が同じ時代のものかも確かめます。
作風
唐物写しの精緻な仕事か、荒竹を生かした自由な造形か、縦の線を生かした近代的な姿か。代ごとの作風との整合性を見ます。
竹の時代色
年月を経た竹の色の落ち着き方や手擦れ。後から作ることのできない、時代の手がかりです。

どれか一つだけで決めることはできません。たとえば箱だけが別の籠と入れ替わっていることもあり、箱と籠の両方を見比べることが大切です。「尚古斎」と「尚古齋」の表記の違いは同じ字の新旧の書き方で、それ自体が真贋や代の決め手になるわけではありません。

Five factors価値を左右する、五つの要素

何代目の作かが分かったうえで、当店では次の点を総合して評価いたします。

代
初代から五代まで、どの代の作か。代によって評価の軸が変わります。
共箱・箱書
作者自身が署名した共箱が揃っているか。作品名や来歴の書付があるか。
編みと形
ひごの揃い、目の均一さ、口や底の始末、手の付け根の納まり。その代らしい出来映えか。
時代色・状態
竹の色合い、虫食い・割れ・ひごの外れの有無。
付属・伝来
落し(中の水受けの筒)や栞、煎茶道具などと一緒に伝わってきたか。

竹籠の種類や素材、ほかの名工の作については、竹籠の買取のページでも詳しくご案内しております。尚古斎の籠は煎茶道具と一緒に伝わっていることも多いので、まとめてお見せいただくと、全体として評価しやすくなります。

Where to sellなぜ、売る先で評価が変わるのか

早川尚古斎の籠は、国内だけでなく海外でも高く評価されてきました。ニューヨークのアビー・コレクションをはじめ、日本の竹工芸を体系的に集めた海外のコレクションにも、初代尚古斎の作が収められています。同じ一点でも、「古い竹の籠」として見る店と、何代目の作かを見極め、こうした評価を踏まえて見られる店とでは、ご提示できる金額に差が生じます。

古美術もりたは、茶道具・煎茶道具とともに竹籠を見つめ、海外のオークションハウスとの取引を重ねてまいりました。作品にふさわしい評価を率直にお伝えし、無理にお勧めすることはございません。尚古斎の籠をお持ちでしたら、竹籠の買取のご案内もあわせてご覧のうえ、まずは現状のままご相談ください。

早川尚古斎の花籃の売却・査定のご相談

古美術もりたは、初代から五代まで、早川尚古斎の籠を作品の価値に見合って評価いたします。何代目か分からない籠、箱だけ・籠だけが残っているもの、傷みのあるものでも構いません。煎茶道具とあわせたご整理も承ります。お見積り・ご相談は無料、秘密厳守で承ります。

お電話:03-3415-1670(年中無休 9:00–18:00) メール:info@art-morita.com
尚古斎の査定を相談する 竹籠の買取について 煎茶道具の買取について

FAQよくある質問

箱に「尚古斎」とだけあり、何代目か書かれていません。分かりますか?
箱書に代数が記されていないことは珍しくありません。署名と印の書きぶり、箱の時代、籠の作風や竹の時代色をあわせて拝見し、何代目の作かを見極めます。ご自身で判断なさらず、箱と籠をそろえたままお見せください。
「尚古斎」と「尚古齋」、表記が違うのは別の作家ですか?
いいえ。「斎」と「齋」は同じ字の新旧の書き方で、箱書や資料によって両方の表記が見られます。表記の違いだけで別人や真贋を判断することはできませんので、作品そのものとあわせて拝見いたします。
共箱がない早川尚古斎の花籃でも、買取してもらえますか?
はい、拝見いたします。共箱がある方が評価は安定しますが、籠そのものの作行きや銘から作者や時代が推定できる場合もございます。箱が別の場所にしまわれていることもありますので、心当たりがあればあわせてお見せください。
人間国宝になった五代の作品も見てもらえますか?
はい。五代 早川尚古斎は2003年に重要無形文化財「竹工芸」保持者に認定されました。初代から五代まで、どの代の作品も拝見いたします。ほかの人間国宝の作品とまとめてのご相談も承ります。
古い花籃で、ひごの外れや虫食いがあります。それでも見てもらえますか?
はい。多少の傷みがあっても、代や作行きによって評価が残ることがございます。水拭きや洗剤での洗浄、ご自身での修理はなさらず、外れたひごも捨てずに、現状のままお見せください。
早川尚古斎の花籃の出張査定は、どの地域まで来てもらえますか?
東京・成城を拠点に、全国へ出張いたします。東京都・神奈川県を中心に、千葉県・埼玉県・茨城県・栃木県・群馬県・静岡県へも多くお伺いしております。出張費・査定料・ご相談料はすべて無料です。詳しくは竹籠の買取をご覧ください。

About / Operator運営者・鑑定者情報

竹籠のような竹工芸の査定は、編みと素材への確かな知識と、作者・来歴への敬意が要です。古美術もりたの概要と、取引に関わる許可・登録をご案内いたします。

屋号
古美術もりた(Antique & Fine Art Morita)
所在地
〒157-0066 東京都世田谷区成城3-4-3
小田急線「成城学園前駅」より徒歩8分(ご来店は完全予約制)
電話/受付
03-3415-1670 年中無休 9:00–18:00
創業
神奈川県鎌倉市にて創業。現在は東京・世田谷区成城に拠点を構える古美術商です。
取扱分野
竹籠・花籃・竹工芸、茶道具・煎茶道具をはじめ、近代日本画・書画・書道具・仏教美術・中国美術など古美術全般。
鑑定・実績
古美術商として長年、美術と向き合ってまいりました。美術館への収蔵・展示協力(作品貸出)、海外オークションハウス(サザビーズ・クリスティーズ等)との取引を重ねております。
古物商許可
東京都公安委員会 第303282320966号
特別国際種事業者
登録番号 第00596号

※ お見積り・ご相談はすべて無料、秘密厳守でお伺いいたします。許可・登録の詳細はご利用案内をご覧ください。

竹籠の買取・出張査定エリア

花籃・竹工芸の買取は竹籠の買取(全国対応)をご覧ください。下記の地域は出張査定でお伺いしております。

参考:大阪市立東洋陶磁美術館「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」(展覧会情報)、国立新美術館 アートコモンズ、各種の作家略歴資料。
※ 歴代の生没年・経歴は公開されている資料に基づくご案内で、資料によって異同がございます。個別の作品の代・真贋・価値を断定するものではありません。個別の作品については、拝見のうえでご提案いたします。