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書道具

「李鼎和」と刻まれた筆― 上海の老舗筆荘の唐筆は売れるのか、文革前の品・使用済みの筆の価値と買取の見極め方

2026.10.09 古美術もりた
白い羊毫や褐色の兼毫の穂先が並ぶ、竹軸の唐筆(中国の筆)
白い羊毫、褐色の兼毫――穂先の表情はさまざま。使い込まれた唐筆にも、それぞれの価値があります。

筆立てや筆巻きの中から、竹の軸に「李鼎和」と刻まれた筆が出てきた――。書道をなさる方なら、その名に聞き覚えがあるかもしれません。李鼎和(りていわ)は、清の時代に上海で開かれた老舗の筆荘(ひっそう=筆の専門店)で、とりわけ古い時代の筆は、いまも書家や愛好家のあいだで大切にされています。本稿では、李鼎和とはどのような筆荘か、筆のどこを見れば時代や素性がわかるのか、そして使い込まれた筆でも評価される理由と、売却をお考えの際の見極め方を、古美術商の立場からご案内いたします。

結論から申し上げれば、李鼎和の筆の価値は「いつの時代の筆か」「穂(毛)がどのような状態か」「何本、どのような揃いで残っているか」で大きく変わります。とりわけ文化大革命以前に作られた筆は、いまでは作ることのできない品として求められています。また、使用済みの筆であっても、丁寧に洗って乾かされ、穂が整っているものは、実際に使いたいという方に大切に求められます。一方で、近年の復刻品や、穂の傷んだ筆は値がつきにくいのも事実です。古美術もりたは、中国美術を専門のひとつとし、海外のコレクター・オークションハウスとのネットワークをもつ古美術商として、その違いを率直にお伝えし、品にふさわしい評価をご提案いたします。

この記事でわかること

李鼎和(りていわ)とは ― 清の咸豊元年(1851年)、上海に開かれた筆荘。上海で最も早く開かれた筆荘のひとつとされ、筆の名産地・浙江省湖州の流れをくむ「湖筆(こひつ)」、なかでも羊の毛を用いた羊毫筆(ようごうひつ)を得意として、「鼎(かなえ)」にちなむ商標で知られました。1950年代以降は国営の体制に組み込まれ、文化大革命を機に老舗の屋号は表舞台から姿を消しました。そのため、文革前に作られた李鼎和の筆は、いまでは得がたい唐筆として珍重されています。

What is Li Dinghe李鼎和とは ― 上海の老舗筆荘

中国では古くから「湖筆徽墨(こひつきぼく)」――筆は浙江省湖州のもの、墨は安徽省徽州のものが最上――といわれてきました。湖州の善璉(ぜんれん)は、いまも筆づくりの里として知られています。

李鼎和は、清の咸豊元年(1851年)、上海に開かれた筆荘です。上海で最も早く開かれた筆荘のひとつとされ、湖州の技を受け継ぐ湖筆を扱い、なかでも羊毛を用いた羊毫筆を精製して、「鼎」にちなむ商標を掲げました。のちに店は上海の目抜き通りへと移り、周虎臣(しゅうこしん)・楊振華(ようしんか)といった筆荘とともに、上海の筆の商いを担いました。二十世紀前半には上海の筆荘業が大きく栄え、職人の数も大きく増えたと伝えられます。

日本へも、明治から昭和にかけて多くの唐筆(とうひつ=中国の筆)が渡り、李鼎和の筆も書家や書道を学ぶ方々に愛用されました。書道具の整理でいまも李鼎和の筆に出会うことが多いのは、それだけ日本で親しまれてきた証でもあります。

Before and after文革前と後 ― 消えた屋号と、残された筆

1950年代、中国の私営の商工業は国の体制に組み込まれていきました。筆の世界でも、1956年に国営の上海工芸が設立され、李鼎和の名柄(ながら=銘柄)を中心に、名称を改めて筆づくりが続けられたと伝えられます。

そして1960年代半ばに始まった文化大革命を機に、李鼎和をはじめ、戴月軒(たいげつけん)・邵芝巌(しょうしがん)といった名だたる老舗の屋号は廃され、新たな工場へと統合されていきました。古い屋号のもとで受け継がれてきた筆づくりは、ここで大きな断絶を迎えます。のちに名筆の再生も試みられましたが、往時の筆とは似て非なるものになってしまったともいわれます。

こうした経緯から、文化大革命以前に作られた筆――いわゆる「文革前の唐筆」は、良質な毛と確かな技でつくられた、いまでは得がたい筆として、書家や愛好家のあいだで特に大切にされています。なお、近年は李鼎和の名を冠した復刻の筆も販売されていますので、同じ「李鼎和」の名でも、いつの時代のものかを見極めることが大切です。

Where to look筆のどこを見るか ― 刻字とラベル

唐筆の素性を知る手がかりは、主に筆管(ひっかん=軸)に刻まれたり書き入れられたりした文字と、軸の上部に巻かれたラベルにあります。

竹の筆管に「加料条幅 李鼎和」と書き入れられた筆(近年の復刻品)と、「金鼎牌」のラベルが巻かれた蘇州湖筆の筆
唐筆の筆管には、このようにさまざまな形で筆名や筆荘の名が記されています。左の筆には「加料条幅」の筆名とともに「李鼎和」の名が書き入れられ、右の筆には「金鼎牌」のラベルと「蘇州湖筆」の文字が見えます。なお、左の李鼎和の筆は近年の復刻品です。復刻品にも同じように「李鼎和」の名が記されているため、名前だけで時代を判断することはできません。

筆管の刻字 ― 筆名・等級・筆荘名

筆管には、「玉蘭蕊(ぎょくらんずい)」のような筆の名前、「超品」「雅品」「精選」といった等級や品質を示す言葉、そして作った筆荘や工場の名が刻まれていることが多くあります。李鼎和の筆であれば、「李鼎和」「李鼎和精選」などの文字が、刻まれたり、色で書き入れられたりしています。玉蘭蕊は、白い羊毫を用いた筆の名として広く知られ、李鼎和をはじめ多くの筆荘・工場が手がけました。

軸上部のラベル ― 製造元と商標

軸の上部に紙のラベルが巻かれている場合は、製造元の工場名や商標が記されています。写真の例では、「金鼎牌」の名と鼎の図柄が見えます。工場名や商標の書かれ方から、作られた時代の見当がつくこともあります。ラベルは剥がれやすいものですが、残っていれば大切な手がかりになりますので、剥がしたりなさらず、そのままお持ちください。

もっとも、写真の復刻品のように、刻字やラベルだけで時代や真贋を判断することはできません。穂の毛の質、筆管の竹や頭(とう)の作り、古色などをあわせて、総合的に拝見いたします。

Used brushes使用済みの筆でも ― 大切に使われてきた筆の価値

「使った筆には値がつかないだろう」と思われる方は少なくありません。ところが、李鼎和のような老舗の唐筆、とりわけ文革前の筆には、使用済みであっても求める方がいらっしゃいます。

いまでは同じ質の筆を新たに手に入れることが難しいため、使い込まれた筆であっても、「実際に書いてみたい」「この筆で書きたい」という書家の方がおられるのです。使い終えるたびに丁寧に洗い、穂先を整え、陰でよく乾かして大切に保管されてきた筆は、穂のまとまりや弾力が保たれており、中古品であっても十分に使うことができます。前の持ち主が大切に扱ってきたことは、筆の姿にそのまま表れます。

反対に、墨が根元に固まったまま乾いてしまった筆や、虫に食われた筆、穂が抜けたり切れたりしている筆は、評価が難しくなります。とはいえ、ご自身では判断のつかないことも多いものです。いまからあわてて洗い直したりなさらず、現状のままご相談ください。無理に洗うと、かえって穂を傷めてしまうことがございます。

Five factors価値を左右する、五つの要素

李鼎和をはじめとする唐筆を拝見する際、当店では次のような点を総合して評価いたします。ひとつの要素だけでなく、全体の格として捉えることが大切です。

筆荘・銘
李鼎和など、どの筆荘・工場の筆か。筆管の刻字やラベルに記された筆名・等級。
時代
文化大革命以前の筆か、それ以降の筆か、近年の復刻品か。
穂(毛)の状態
未使用か使用済みか。使用済みの場合は、穂のまとまり・弾力、根元の墨の残り、虫食いや切れの有無。
筆管・付属
竹軸の状態、頭やキャップの有無、ラベル・箱・筆巻きなどの付属。
本数・揃い
何本残っているか。同じ筆荘の筆や、大小の揃いでまとまっているか。

当店では、文革前に作られた李鼎和の筆をとりわけ高く評価いたします。また、使用済みの筆であっても、丁寧に手入れされ穂の整ったものは、使い手に求められる筆としてしっかりと評価いたします。筆は一本ずつよりも、まとまっているほど評価しやすくなりますので、筆立てや筆巻きの中身は、どうぞまとめてお見せください。

硯・墨・印材などとあわせた一括のご整理は、書道具の買取のご案内もご覧ください。筆は他の書道具とまとめて拝見するほうが、全体として評価しやすくなります。

An honest line値がつきにくい筆 ― 率直な線引き

「李鼎和」の名があれば、すべてが高く売れるわけではありません。近年に作られた復刻品や一般的な練習用の筆、穂が固まったり虫に食われたりして使うことのできない筆は、残念ながら値がつきにくいのが実情です。

また、古い屋号を写しただけの筆や、時代を古く見せかけた筆も見受けられます。私どもは、拝見したうえで評価が難しい場合にも、その理由とあわせて率直にお伝えいたします。無理にお勧めすることはございません。

ひとつご注意いただきたいのは、ご自身での手入れです。固まった穂を無理にほぐしたり、ラベルを剥がしたり、筆管を磨いたりなさると、かえって評価を下げてしまうことがございます。どうぞ、そのままの状態でお持ちください。

Where to sellなぜ、売る先で評価が変わるのか

同じ李鼎和の筆でも、その価値を国内の相場だけで判断する店と、中国本国の需要や国際的な市場を見据えて評価できる店とでは、ご提示できる金額に差が生じます。文房具(文房四宝)は、いま中国本国をはじめ海外のコレクターのあいだで改めて見直されており、日本に伝わった文革前の唐筆は、いま最もふさわしい買い手が海外にいることも少なくありません。

また、筆は実際に使われる道具でもあります。品の素性と状態を正しく見極め、使い手に、あるいは収集家に、ふさわしいかたちで橋渡しすることが大切です。古美術もりたは、中国美術を扱い、海外のコレクター・オークションハウスとの取引を重ねてきた立場から、品が本来の価値で次の持ち主へ渡るよう、お手伝いをいたします。唐筆は書道具の買取のなかでも、時代と状態の見極めが欠かせない品ですので、ご自身で結論を出される前に、まずは現状のままご相談ください。

李鼎和の筆・唐筆の売却・査定のご相談

古美術もりたは、中国美術を専門のひとつとし、李鼎和をはじめとする唐筆を、品の価値に見合って評価いたします。使用済みの筆、銘の読めない筆、筆立てや筆巻きにまとめて入った筆でも構いません。まずは一本一本の状態から丁寧に拝見いたします。お見積り・ご相談は無料、秘密厳守で承ります。

お電話:03-3415-1670(年中無休 9:00–18:00) メール:info@art-morita.com
李鼎和の筆の査定を相談する 書道具の買取について 中国美術の買取について

FAQよくある質問

李鼎和の筆は、どのように読むのですか?
「りていわ」と読みます。中国語では「リー・ディンフー(Li Dinghe)」に近い発音です。清の咸豊元年(1851年)に上海で開かれた筆荘で、筆管に「李鼎和」「李鼎和精選」などの文字が刻まれていることがあります。
使用済みの筆でも買い取ってもらえますか?
はい。李鼎和のような老舗の唐筆、とりわけ文革前の筆は、使用済みであっても、実際に使いたいという方に求められます。丁寧に洗って乾かされ、穂が整っているものは、しっかりと評価いたします。いまからあわてて洗い直したりなさらず、現状のままお見せください。
文革前の筆かどうか、自分では分からないのですが見てもらえますか?
はい、もちろんです。筆管の刻字やラベル、穂の毛の質、竹軸の作りや古色などをあわせて拝見し、時代の見当をお伝えいたします。近年は李鼎和の名を冠した復刻の筆もございますので、ご自身で決めつけず、現状のままお持ちください。
穂が固まっていたり、虫食いがあったりする筆はどうですか?
状態によって評価は下がりますが、文革前の筆であれば、筆管や刻字そのものに価値が残ることもございます。ご自身で穂を無理にほぐしたりなさらず、そのままご相談ください。
ラベルが剥がれかけています。剥がしてもよいですか?
剥がさずにそのままお持ちください。ラベルには製造元や商標が記されており、時代や素性を知る大切な手がかりになります。剥がれ落ちたラベルがあれば、それも一緒にお見せください。
李鼎和の筆は、どこに売るのがよいですか?
中国美術に明るく、中国本国や海外の需要にまで繋げられる先をおすすめします。文革前の唐筆は、いま最もふさわしい買い手が海外にいることも少なくなく、国内相場だけで評価する店とは、ご提示できる金額に差が生じます。当店は海外のコレクター・オークションハウスとの取引を重ねております。
筆だけでなく、硯や墨もまとめて見てもらえますか?出張は可能ですか?
はい。硯・墨・筆・印材・文鎮など、書道具は一括で拝見するほうが評価しやすく、まとめてのご整理を承っております。詳しくは書道具の買取をご覧ください。東京都・神奈川県を中心に、千葉県・埼玉県・茨城県・栃木県・群馬県・静岡県まで出張査定にお伺いいたします。

About / Operator運営者・鑑定者情報

中国美術の売却は、確かな知識と国際的な販路が要です。古美術もりたの概要と、取引に関わる許可・登録をご案内いたします。

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古美術商として長年、美術と向き合ってまいりました。美術館への収蔵・展示協力(作品貸出)、海外オークションハウス(サザビーズ・クリスティーズ等)との取引を重ねております。
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硯・墨・筆・印材の買取は書道具の買取(全国対応)をご覧ください。下記の地域は出張査定でお伺いしております。

※ 筆の時代・素性・状態・価値は、品によって異なります。本記事は一般的なご案内であり、個別の品については拝見のうえでご提案いたします。
※ 李鼎和の創業(清・咸豊元年=1851年、上海)は中国作家網「老上海笔业」、上海工芸の設立と文革による屋号の統合は書道用品店などの解説によります。沿革・年代には諸説あります。
※ 本文中の筆管の写真は、刻字・ラベルの見方を示すための例です。